セミナー「奥会津地方の建築儀礼と番匠巻物」

祈りのかたち – 知られざる建築儀式の世界 –(竹中大工道具館企画展2017.4.15~5.28)

近頃は、建築儀礼(地鎮祭や上棟式)が執り行われる様子に出くわすことが少なくなりました。まったく無い訳ではありませんが、自分が関わる物件でも必ず行われるものでなくなってしまったことはやはり寂しい気がします。

今日は久しぶりに「技と心セミナー」へ行きました。お茶の水女子大学教授・宮内貴久先生による「奥会津地方の建築儀礼と番匠巻物」。全国でも珍しい伝承的に行われる福島県奥会津地方での上棟式の様子と、そこにまつわる大工(この地方では「番匠」と呼ばれる)の師弟間に伝わる巻物伝授のお話でした。

この地方では、大工修行が終わり一人前にになると親方から弟子へ巻物が伝授されるのだそうです。巻物は一人前になった証のようなもので、例えが悪いですが、もし親方が事故でなくなり巻物伝授が受けられないとなると弟子たちは大騒ぎになるのだとか。是が非でも手に入れないと、自分たちの価値を失うかもしれない。そんな勢いのようです。
では、その大事な巻物に一体何が書かれているのか? 簡単に言ってしまうと大工の心得や技術書のようです。その中には儀礼のマニュアルもあります。なるほど大工さんにとってはバイブルなのかと思いきや、実はほとんど読まれることはなく、むしろ普段何もない時に決して開いてはならないものだとか。まるで呪物のような扱いで、不思議な伝承です。
また巻物が唯一使われる儀礼は上棟式だそうですが、ここでもようやく巻物を開きはするものの一文一句詠む訳でもないのだとか。。。ますます不思議。それでも普段、巻物は袱紗に包まれ桐箱に入れられ神棚に祀られているそう。上棟式となれば、どんなに現場が離れていようと棟梁自らが巻物を取りに帰るのだそうです。

宮内先生は、そうした巻物を大工さんのお宅へ一軒一軒廻り見せていただき、そのルーツを解き明かそうとされています。また他の地方に同じような伝承はないのか史料調査されています。

祈りのかたち – 知られざる建築儀式の世界 –(竹中大工道具館企画展2017.4.15~5.28)

そんな巻物の話の最後、驚きになったのは「まじないうた」のお話。
いくつかある歌の中でも、安寧な生活がいつまでも続くことを望む歌として「君が代」が普段から口ずさまれていた?そうです。スライドに映る巻物の写真にきっちり歌詞が書かれているのが読み取れます。「君が代」は平安時代の和歌。お祝いの歌、建物に思い馳せる歌として謳い継がれてきたという事は思いもよりませんでした。

講演の始めにありましたが、建築とは野生の空間に人が住めるように秩序立てること。家を建てるという事は子孫繁栄の基礎となること。そこに儀礼が生まれてきたのだそうです。なので、地鎮祭の後に板囲をし夫婦がそこで一夜を過ごし、自分たちの住む土地を獣に汚されないように守るということもされていたそうです。

施主さんの思いが宿る。そんな地鎮祭や上棟式をずっと続けて欲しいものです。

 


祈りのかたち – 知られざる建築儀式の世界 –(竹中大工道具館企画展2017.4.15~5.28)

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