見学会「三木の鍛治場を巡る」

刻印(常三郎)

先日、竹中大工道具館主催の見学会「三木の鍛冶場を巡る」に参加してきました。限定20名とあって、まず無理だろうと思ってスッカリ忘れていたところ、なんと当選。意気揚々と貴重な社会見学に行ってきたところです。
訪問先は三件。鉋(かんな)常三郎、鋸(のこ)カネジュン、鑿(のみ)錦清水。基本の大工道具・三品の刃物の製作風景を見学させていただきました。

まず、鉋(かんな)常三郎。
こちらでは、大きな工場で製造をされています。土曜日だったこともあって職人さんはお休み、残念ながら製作風景を直に見る事は出来ませんでしたが、社長の魚住昭男さんと入社7年目の若い職人さんに、時折実演を交えながら工場内を丁寧に案内して頂きました。いちいち機械が格好良いのですが、技術だけでなく材料研究の熱心さも品質を支えている様子が社長さんの話から聞き取れます。道具の事は素人ですが、ひとつ「鉄」と言ってもイロイロあるわけです。刃物に向く良質な鉄は少なくなっているのだとか、向かないと思われた新しい鉄鋼材料をどうすれば使えるようにできるのだとか。。。
実はこの後もそうですが、マニア過ぎて実は全然ついて行けてません。(泣)

次に、鋸(のこ)カネジュン。
日本で最初の工業団地と言う三木金属工業センターの一角に、カネジュンさんはあります。伝統工芸士(ほぼ同年の若い方です)であり社長の光川順太郎さんに駆け足で実演を見せて頂きました。使いやすいノコギリ、切れ味の良いノコギリとは?よくよく見てみれば、鋸は他の大工道具に比べると非常に複雑な形をしています。素人目にはギザギザな薄板なだけですが、まず驚いたのは、単に薄っぺらい板ではなかったことです。引きのよい感触にするには実は中程に薄くなっているのだそう。これだけではありませんが、そうする事で切るにつれ木に挟まれていく刃が動き良いようにしてあります。また、ギザギザの刃は右左に振れている事は知っている方も多いと思いますが、実は出来るだけ振れないようにした方が鋭利な切れ味になって行くことです。考えてみればナルホドですが、実は単純な話ではありません。コンマ零点何ミリが使い勝手を左右する世界なのでした。
鋸は複雑な工程の為に、道具製造のなかでは機械化が早く進んでいるのだそうですが、日本全国にある鋸生産工程の機械の原点は実は此処にあるのです。

最後に、鑿(のみ)錦清水。
先の二つの訪問先とは打って変わって、まさしく鍛冶工房です。主の錦清水(にしききよみ)さんは、御歳70半ば過ぎ。奥さんと二人三脚で工房を支えられている夫婦鍛冶としても知られているそうです。釜に風を送るふいご・鉄を叩くハンマーや刃物を研ぐサンダーはさすがに機械ですが、格子の窓から冬風も入ってくる土壁の工房を含めて想像する昔ながらの鍛冶屋さんそのままのイメージです。
こちらでも、奥さんと息のあった様子で鑿の刃を作るひと通りの工程を拝見しました。それなりに機械化の進む道具生産の現場で、今なお昔ながらの技法や工法にこだわる強い眼差しがありました。
全国各地の大工さんが、錦さんの鑿を求めてこの工房へ脚を運びます。すぐ側の住居の一室は入れ替わり来る大工さんの為に、製作された鑿が片付ける暇も無く無造作に散らかっていたのが、また格好良いのです。

人の手にせよ機械にせよ、頼る姿勢なく一筋に良い道具を目指す姿勢は、どの方も同じです。カネジュンの光川さんの言葉が印象的でした。「自分の手で出来ることを機械にさせているだけ、自分の手で出来ない者は機械を使っても出来ない」
機械頼りの僕には、まるで戒めのようなお言葉です。この日に参加された方の中には、遠くから来られた熱心な大工さんもいらっしゃいました。良い仕事は、良い腕と良い道具があってこそ、身が引き締まる思いがします。

鉋(かんな)・常三郎

鋸(のこ)・カネジュン

鑿(のみ)・錦清水

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