セミナー「大工棟梁の技と古典建築学」

竹中大工道具館

竹中大工道具館

神戸元町北にある竹中大工道具館の主催するセミナーに行ってきました。興味の湧くセミナーがあれば行く様にしていますが、実はかなり、久しぶり。。。

今回は、「大工棟梁の技と古典建築学」。名工大の先生の講義でした。大工棟梁や日本の建築がどのように後世に伝えられて来たのか。自分が知っていた以上に昔から学問的な体系があったのだと知りました。

師匠から弟子への口伝、見て盗め的な世界が近代まで続いていたのだと勝手に思っていましたが、体系的な(教科書的な)建築技術の文書での伝承は室町末ごろからスタートしているようです。いわゆる秘伝書みたいなところから始まっているようですが、面白かったのは、それが弟子育成のための教科書というよりも、営業目的のポートフォリオみたいな存在にも変遷していくという話です。
もちろん始めは、自分の会得した技術のメモ書きみたいな物から始まっていますが、溜まってくれば整理整頓。折角作ったそれらを、ただ自分や弟子らが見るだけでは勿体ない。今も同じですが、建築の営業をするのに現物を持って歩く訳には行きません。完成物件の見学に現地へ来てもらうのも、お客さんの都合もあるしで、やっぱり大変。なので、写真にしたり図面にして営業ツールにしたくなる訳です。

ウチはこんなスゴい物をしっかりやってるんだぞ。って自慢の書になって、広まって行く。
そして公刊本が産まれる。しかもブランド価値を高めるために、その発生がホントかどうかは別に流派を勝手に名乗る。その時代もナニナニ流、ナンヤラ流とあったようですが、比べるとよ〜分からん違いだったり。

人の考える事は、今も昔も変わらんのだな。別な次元でついつい感心してしまいました。1時間半ぐらいの講義でしたが、眠気も起こらず来て良かったです。道具館に所蔵されている当時の巻物が、講義の為に本日限りの公開もあったオマケ付き。400年も昔の図面が並んでおりました。筆で描かれた図面と言うには、製図ペンで描いたんじゃないの?って思いたくなる精緻な絵です。
ホ〜とか、ハ〜とか、ヘ〜とか、見ている皆さんのため息が聞こえていました。こんな伝承では全くあきまへんが、頭に残っているうちにまたメモっておきます。

西洋でもそうであったように、日本の建築も美術、哲学、数学といった分野と密接な関係を持っていました。大学での西洋建築の講義はそうした関連が強く意識されて、話が展開していたように記憶しますが、今回伺った話で、日本の建築もそうであった事がよく分かります。

数学。日本の建物は西洋のものと違い、柱、梁と言った線で構成されている建築と言っても過言でないと思いますが、随分古い建物でも、きっちり垂直・水平、直角でもって建っています。その点、日本人は古来からきっちりしているみたいです。
ピタゴラスの定理で3・4・5の辺の三角形が直角を生成することは、大工さんたちは経験的に伝わっていますが、正五角形の作り方なんかも、先の秘伝書に紹介されていました。しかもごく身近な方法で。

建築の体系化が進んでいけば、様々な形を種類分け、分類分けしたくなるのは今も昔も変わりません。寺社に見られる跳ね上がった屋根の形状も、幾何学的に分類されていたりします。正直もっと感覚的なものかと思っていました。
一人の棟梁が頭の中の設計図で工事を進めるだけならまだしも、時代が進み請負工事といった組織的な建築工事が発生すると、そうした図面化の必要性がさらに強まります。大勢の人に説明するのに、こんな感じ、そんなぐらいなど、感覚的な説明だけでは伝わりませんし、設計者はどの業者が請け負っても思った物が出来ないと困る訳です。

また工事金額の相見積りをするには、それぞれの請負業者に図面を渡さなくてはなりません。
よって、昔の棟梁は仕事を得るためには数学もできないと金勘定もできない。如何に安く工事が出来る様にするか頭を悩ませるのは、これまた今と全く変わらないわけです。秘伝の教科書には、ちゃんと積算(見積)についても書かれていますし、どれだけの人工(にんく)でどれだけの仕事ができるか、そうした事も記述されているそうです。しかも例題付き。う〜ん、頭が痛い。。。
なので、和算の学者さんが建築設計や工事に関わっているのも当たり前のようですし、複雑な建築様式が発達すれば、数学も伴って発達していったそうです。
建築って、トータルな感覚が本当に必要なんですね。建築道は険しい。

ところで、正五角形の作り方。お分かりになったでしょうか。
初詣でおみくじを引かれる方も多いかと思いますが、大凶なんかが出た日には、真っ先、木の枝なんかに結んで帰りますよね。そこで、きっちりきれいに結ばれたおみくじを思い出して下さい。
その結び目。五角形になっていませんか。言われてみればその通り。講義の最中、ホ〜と感心のため息が漏れてしまいました。

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