
外観。北側道路に接道しています。
鉄道趣味の施主様の意向を受け、玄関戸正面は枕木とレールが敷かれています。カーポートの柱もレール材を使って製作しました。

リビングの様子。家の中心は、レンガを現場で積上げたオリジナルの薪ストーブです。暖炉前のベンチもほんのりと暖かくなります。

比叡山の麓、記憶を受け継ぐ家づくり
比叡山の麓、歴史深き延暦寺の門前町・坂本。参道の賑わいから少し奥に入った、古い木造民家が今なお軒を連ねる落ち着いた一角に、この住まいはあります。ここは、施主様が幼い頃から親しんだ、祖父母様のお住まいがあった場所です。
建て替えのご相談をいただいた当初、敷地にはまだ親戚一同が集ったという旧家が残っていました。土間に鎮座するおくどさん、続き間の伸びやかな和室、そして離れの五右衛-衛門風呂。そこには、ご家族が重ねてきた時間の記憶が、確かに息づいていました。
「この家の記憶を、新しい住まいでも大切にしたい」。
その施主様の言葉を設計の原点とし、解体を始める前に、今はもう作られていない貴重な型板ガラスや、趣のあるガラス障子といった記憶の宿る部材を丁寧に保管することから始めました。それらを新しい空間にどう活かし、過去と未来を繋ぐか。設計は、記憶の片鱗を拾い集めることから始まりました。
設計の核となった3つのご要望
新しい住まいの核となるご要望は、明確でした。
一つは、ご家族の暮らしを大切にしながら、親類縁者が気兼ねなく集える大らかな場所をつくること。 一つは、2階の窓から望む、琵琶湖の夜空を彩る花火大会の景色。 そして、レンガを積み上げた大きな蓄熱式薪ストーブを、家の中心に据えること。
薪ストーブを囲む、家族と親戚が集う場所
これらの要望を叶えるため、家の中心に薪ストーブを配した吹き抜けのあるリビングを計画しました。ストーブの暖かな炎が家全体を包み込み、自然と人が集まる求心的な空間です。リビング吹抜けにまるで秘密基地のように、施主様のご趣味である鉄道模型のコレクションを飾るスペースも設え、暮らしの楽しさを散りばめています。花火大会を望める展望デッキも、屋根上にも設えました。
この住まいの実現には、以前からその丁寧な仕事ぶりに注目していた工務店・宮内建築さんの存在が不可欠でした。早い段階から協働いただいたことで、木の特性を最大限に引き出すディテールや、細部にまでこだわった手仕事が隅々まで行き届き、温もりと品格のある住まいが完成しました。古き良き記憶を宿した建具たちも、新しい空間に違和感なく溶け込み、新たな役割を得て輝いています。
いつでも帰ってこられる「懐かしい駅舎」へ
施主様からいただいた「der nostalgisch Bahnhof」という名前。ドイツ語で「懐かしい駅舎」を意味するそうです。 多くの人が集い、そしてそれぞれの暮らしへと旅立っていく。この家が、ご家族や訪れる人々にとって、いつでも帰ってこられる心安らぐプラットホームのような存在になることを願っています。

リビングを見下ろした様子。階段からぐるりと吹抜けを廻りこめます。中心テーブルは足元を掘込んでいます。

玄関。洗い出しの土間。


玄関ホール
正面の引戸には、以前の住まいの型ガラスを残して嵌めました。

前室になっている和室は、人が集まった時に大きく拡げるなど、いろいろな使い方が可能になります。


玄関から真っ直ぐに進めば、キッチンに繋がります。キッチン脇の階段を上がって2階へ。

和室からリビングを見たところ。内縁を挟んでデッキテラスに出られるようになっています。

暖炉の奥には、大工さんによる造作キッチン。


リビングの吹抜けと、吹抜けに面する2階居室の窓。


2階寝室。
寝室にある押入れに、屋根上に出られるハシゴがこっそり隠れています。

吹抜けの渡り廊下のその先には、施主様の趣味部屋へ到着。


こども室と趣味部屋です。
こども室は階段を上がった直ぐのところ。


バスルームとトイレ。

内縁から、デッキを望む。

建物東面全景。

デッキテラス

建物正面。北面の夜景。
Photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/滋賀県大津市 ・敷地面積/167.95 ㎡ ・用途地域/市街化区域 第1種住居地域 建蔽率60%・容積率160% ・前面道路幅員/(北)4.00 m
【 工事概要 】 ・工事種別/新築 ・建築面積/78.53 ㎡ ・延べ床面積/113.08 ㎡(住宅の部分:同じ) ・構造規模/木造 地上2階 ・最高の高さ/6.43 m ・構造仕様/木造軸組工法 ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎+砕石パイル地盤改良
【 主な外部仕上 】 ・屋根/塗装ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き ・外壁/塗装ガルバリウム鋼板小波板タテ張り・漆喰・杉板貼り
【 主な内部仕上 】・床/スギ板・壁/PB下地漆喰、杉羽目板・天井/PB下地漆喰、杉羽目板
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/宮内建築(大工:古川英之)・薪ストーブ/マックスウッド
完成:2012年9月
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建て替え前の様子





