
2階のダイニングキッチンからリビングを見る様子。

建物全景

屋上バルコニー

2階リビング

リビング上の吹抜け
京都の間口「うなぎの寝床」
古都・京都特有の、間口が狭く奥行きのある、いわゆる「うなぎの寝床」。この間口わずか3mの敷地に、鉄骨3階建ての現代的なデザインを持つ注文住宅を設計しました。
狭小地である物理的な制約を感じさせない、心地よい広がりと豊かな暮らしをいかに実現するかが目標でした。
光と視線が抜ける、奥行きのある空間デザイン
設計の核としたのは、垂直方向と水平方向への「光と視線の抜け」です。
1階では、玄関の扉を開けると視線が自然と室内の最も奥にある坪庭へと導かれます。この視線の通り道が、空間に実際の寸法以上の奥行きと落ち着きをもたらします。
2階のリビングダイニングには、あえて大胆な吹抜けとトップライトを設けました。これにより、都市の密集した住宅地にあっても、常に空の気配とやわらかな光を感じられる開放的なLDKとなることを目指しています。
家族の成長と共に変化する「余白」のある住まい
この住まいは、ご夫婦と元気な二人の男の子、4人家族のためのお住まいです。将来、お子様が成長した際のライフスタイルの変化に対し柔軟に対応できるよう、スタディコーナーや家事スペース、趣味の部屋としても使える「余白」の空間を計画に盛り込みました。時を経て、ご家族の暮らし方そのものが、この住まいの表情をさらに豊かに変えていくことでしょう。
暮らしの風景と「Blue Wind 21」に込めた想い
お引き渡し後、幅2メートルほどのリビングをお子様たちが元気に駆け回っていると伺い、この家が彼らの健やかな成長の舞台となっていることを設計者として大変嬉しく思いました。夏には、五山の送り火の「大文字」を遠くに望む屋上で、ご家族でバーベキューを楽しまれているそうです。
建物の名である「Blue Wind 21」は、お施主様にお願いして付けていただきました。ご主人が特にこだわられた、空の青を映すような美しい外壁の色がそのまま由来となっています。その名の通り、この住まいにいつも心地よい風が吹き抜け、ご家族の穏やかで幸せな時間が流れていくことを心から願っています。

玄関アプローチ。

1階奥から玄関方向を見る様子

1階奥の和室。障子の向こうに小さな坪庭があります。


アイランド食器棚の向こうにダイニングキッチン。テーブルを含めて、家具製作しました。

2階リビングから3階への階段。
パンチングの鉄板穴から下へ、光の雨が降り注ぐことがあります。


3階廊下の様子。東向き、西向き。
廊下に面しポリカーボネイトの中には、スタディスペース、家事スペースと自由に使うことを考えられる余白スペースを設えました。

ベッドルーム。


夜景。建物全景と玄関。
photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】・場所/京都府京都市 ・敷地面積/50.82 ㎡ ・用途地域/市街化区域 工業地域 建蔽率60%・容積率200% 準防火地域 ・前面道路幅員(東)7.92m
【 建物概要 】・工事種別/新築(一戸建ての住宅) ・建築面積/30.38 ㎡ ・延べ床面積/87.87 ㎡(住宅の部分:同じ)・構造規模/鉄骨造 地下3階 ・最高の高さ/9.90 m ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎
【 主な内部仕上 】・屋根/シート防水 ・外壁/ガルバリウム鋼板波板
【 主な外部仕上 】・床/フローリング ・壁/エマルジョンペイント ・天井/エマルジョンペイント
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・構造/ステラジアン建築構造研究所(担当:原田順三) ・施工/宮城建設株式会社(担当:宮城康司) ・家具/カリエラ(担当:船越優二)
「すまいの感想」
振り返ってみると家が建つまでワクワクして楽しんだ部分と、今やてっきり忘れて いた苦労の部分がしみじみと思い出されます。
先日、わが家ではここに住んでまる一年の「家のお誕生日」と称して、家族でろうそく一本たてたケーキを食べることにしました。5歳の長男は説明すると何となくわかったようで「ほんじゃ、今日はお掃除してあげよ!お母さん、雑巾もってきてぇな、 ぼく、家の中ふくわ!!」と言い出しました。
今まで彼も幼稚園のお友達を呼ぶにし ろ、京都特有の間口の狭い2階建てのそれも東向きで風通 しの悪い家で2.3人呼ぶ のがやっとだったのが、今や数人の友だちが「あきちゃんのうち、おもしろ~い」と いって、みんなで楽しそうに ”かくれんぼ” ができてとても満足しているようです。 入居したときには鉄骨で無防備な部分が、5歳と2歳の子どもには危なっかしくて本当に怖かったのが正直なところでしたが、それが今はずいぶんと慣れたもので子どもの成長が手に取るようにわかります。
また、日中は生活の中心が2階のリビングなので明るくて電気をつけたことがありません。 そして、なんと言っても風通しが抜群です。今やこんなに暑くなってきましたが、まだクーラーも我慢できます。
そして以前の家では全く育たなかった観葉植物が今やぐんぐんと枯れることなく育っています。 ( 仕事から遅く帰っても植物にニタッと しながら水やりを楽しむ主人は休日のせま~い屋上のビヤガーデンがお気に入りです。 )
長男は気管支が弱く、風邪をひくとすぐに「ゼロゼロ」いっていたのが今はそのよう なことが少なくなりました。
欲を言えば雨の日にも窓をもっと開けられたらなぁと思 います。外観が縦に長い長方形なので雨が降ると瓦葺きのような屋根がない分、直接 、 窓ガラスに雨が降り注いでしまいます。(外からの掃除の手間は省けますが<笑>)
今の家が経済的にも将来的にも、私たちが心地よく、せいいっぱい背伸びした理想のカタチだと思います。子どもの成長も含め、長い目で見て設計していただいたこの家 がこれからも私たち家族をつなぐ宝物であり続けてほしいと思います。
(2002/07/29/施主様より)