
2階リビング。周囲は一般住宅や集合住宅に囲まれた市街地なので、採光にはトップライトを採用。

建物全景。正面。

正面がガラス張りの階段室見下ろし

1階SOHOオフィス
神戸市の旗竿地に建つSOHO住宅
CGデザイナーであるクライアントとの濃密な対話から始まった、神戸市のSOHO(事務所兼用住宅)プロジェクトです。それは単なる発注者と設計者の関係を超え、同じクリエイターとして互いのビジョンをぶつけ合う、創造的なセッションとなりました。
都市の奥、旗竿地という未来への問い
敷地は神戸市にある、幅2メートルの通路を抜けた先の旗竿地。設計を始めた当初から、この場所がやがて迎えるであろう未来の姿を想像していました。いずれ周囲に建物が密集し、この小さな住まいはまるで渓谷の底のように、街並みの中に静かに埋もれてしまうだろう、と。
その予測を、単なる制約とは捉えずに、むしろ、それを設計の力強い出発点と捉えました。
光を求め、空へと伸びる設計コンセプト
将来、四方を閉ざされるという未来から逆算し、「建築が内に持つべき本質的な豊かさとは何か」を問い直す。狭小で外部とのつながりが希薄になるからこそ、内部空間の質が、住まい手の体験のすべてを決定づけます。
導き出した答えは、光を巧みに取り込み、空へと伸びゆくような「垂直方向への空間体験」をデザインすることでした。
閉じた環境だからこそ生まれる、内なる豊かさと開放感
この建築は、訪れる人にまるで地下から地上へと向かうような、光に満ちた上昇感と開放感をもたらします。トップライトや間接光は壁面を伝い、空間の隅々まで柔らかな明るさを満たしていく。時間と共に表情を変える光は、閉ざされた環境であることを忘れさせ、内面的で豊かな時間を育むための装置として機能します。
働きながら暮らすSOHOだからこそ、この内なる豊かさは大きな意味を持ちます。
変わりゆく都市への応答
周囲の環境がどう変わろうとも、外部に左右されない確かな世界がここにあります。
この住宅が、住まい手の創造性と響き合いながら、変わりゆく都市の中で静かな光を放ち続ける存在となることを願っています。

階段室

玄関ホール

1階SOHOオフィス

2階へ

2階リビング北面。トップライトのように見える部分は、3階から間接光を取り込んでいます。閉鎖的な2階リビングですが、ほのかな明りが空間全体を包みます。

リビング西向き。キッチンスペース

リビング南の一画。周囲建物の抜けを狙った窓。


階段室の引戸。

階段室

階段室

階段室


3階寝室北向き。
ベンチ下がポリカーボネイトになって、2階へも光を届けます。

3階寝室南向き。


夜景
Photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】・場所/兵庫県神戸市 ・敷地面積/68.43 ㎡ ・用途地域/市街化区域 第1種中高層住居専用地域 建蔽率60%・容積率200% 第3種高度地域 準防火地区 ・前面道路幅員:(北東)5.97m
【 工事概要 】 ・工事種別/新築(スタジオ併用住宅) ・建築面積/38.42(建蔽率56.14%・許容60%) ・延床面積/102.39(容積率149.62%・許容200%) ・構造規模/鉄骨造一部RC造・地上3階
【 主な仕上 】 ・屋根/シート防水 ・外壁/フレキシブルボード化粧ビス止
【 主な仕上 】 (1階) 床/モルタル金ゴテ押え ・壁/木毛セメント板貼り ・天井/デッキ現し (2階) 床/フローリング ・壁/シナベニヤEP ・天井/デッキ現しOP
(3階) 床/フローリング ・壁/シナベニヤEP ・天井/石膏ボードEP
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/越智工務店(担当:田畠)
完成:2000(h12)年12月
掲載等
「project HOUSE 99.99 」施主さんHP
「新建築住宅特集」No.182・2001年6月号
「カーサウェスト」No.12・2001年夏号
「LiVES」 vol.06・2002年秋号
「すまいの感想」
HOUSE99.99 の施主から一年後の感想を頂きました。
HOUSE99.99にすみついてから、はや1年以上が過ぎようとしています。
正直、なじむには数年かかりそうかなと思っていましたが,意外とはやくこの生 活になじんでしまったようです。
たしかに、超快適というかんじではないですが、暑さ寒さを感じたり,接道面 の 窓を開け放したときの風を感じたり、この外観から想像しないような自然を感じ ることもできるようです。
CAFEテーブルも、それほど使用頻度はないですが,その分スペシャルなエリアと いう感じで新鮮さがまだ感じられます。
窓がないのに意外に明るいのも、来客者の共通の感想です。
この一年の間に、隣にはとうとうハイツが立ちはだかり、そろそろ埋もれかかっ てきていますが、それでも、たまにびっくりした様子でこちらをみながら前の道 路を歩いている人を見かけると、”ニヤリ”としてしまうのは、存在感の証では ないでしょうか?
今後は,ちょっと接道をうまく演出して、ちょっとした隠れ家的な雰囲気にでき たらなあと画策しています。
(2002/03/27/施主様より)

施主様が制作されたCGの躯体イメージ