KAKInoIE

リビング

外観全景。

奈良の閑静な住宅街に建つ、こだわり注文住宅

奈良市郊外、古くからの住宅が建ち並ぶ落ち着いた街並みに、この新築一戸建てはあります。しっかりとしたご近所付き合いが息づくこの場所で、施主様との新たな家づくりが始まりました。

コンセプトは「お酒がおいしく飲める家」

施主様の一番のご要望、それは「お酒がおいしく飲める住まい」でした。この明快なコンセプトを設計の核に、土地探しの段階からお付き合いさせていただきました。巡り巡って決まったのは、計画初期に見送った土地。これも何かのご縁でしょう。いくつかの提案を経て辿り着いたプランは、残念ながら当初の予算を大きく超え、ほろ酔い気分だった施主様の表情を引き締めてしまったかもしれません。

光とプライバシーを両立する、中庭を囲むコの字プラン

紆余曲折の末に完成した「カキノイエ」は、プライベートな中庭を囲んで南に向かって「コ」の字に開いた間取りが特徴です。その南側には隣地の擁壁があり、外部からの視線を遮り、四方を囲まれた中庭のような、落ち着きのあるアウトドアリビング空間を生み出しました。
特徴的な三角形の外観は、南に屋根を低く下ろし、冬の低い日差しを中庭の奥まで導き入れることを可能にしました。

ダイナミックな勾配天井の吹き抜けリビング

この家のハイライトは、なんといってもダイナミックな吹き抜けを持つリビングです。最も低い天井は、背の高い施主様が手を伸ばせば届きます。そこから北側へ向かって劇的に伸び上がる勾配天井は、空間に力強い躍動感と開放感を与えています。トップライトが光を落とす階段を上り、2階の子ども部屋の小窓から見下ろすリビングもまた壮観な眺めになりました。

仲間と集う、シェフこだわりのダイニングキッチン

料理好きの施主様が特にこだわったのがキッチンです。奥行き80cmのゆったりとしたカウンターが、そのままダイニングテーブルへと一体で繋がるオーダーメイドのデザインを採用しました。広々とした厨房で腕を振るう姿は、さながらレストランのシェフのよう。打合せの折、幾度となく振る舞っていただいた手料理、美味しい食事を囲んで弾む会話。施主様が大切にされるその時間を、キッチンからダイニング、リビングへと続く空間の流れに重ね合わせ、設計に落とし込みました。

最後の最後まで悩み抜いた天井の仕上げをはじめ、私たちの細かな要求に応え、見事な技術で形にしてくださった工務店の社長と棟梁に、心から感謝しています。こうしてまた一つ、心地よい住まいが完成したことがなにより嬉しく思います。

リビング

玄関ホール

製作のキッチン

寝室

階段の先は窓とトップライト

階段からの見下ろし。
吹抜けに面した書斎スペース。

子供室からリビングが見下ろせます。

北向きの正面外観

外観東面

Photo:庄司洋建築設計事務所

建築概要

【 敷地概要 】 ・場所/奈良県奈良市 ・敷地面積/210.83 ㎡ ・用途地域/市街化区域 第1種低層住居専用地域 建蔽率40%・容積率60% 外壁後退 1.0 m 高さの限度 10 m 防火指定なし(法22条指定地域) ・前面道路幅員:(北)約 4.5 m (東)約 6.0 m
【 工事概要 】 ・工事種別/新築 ・建築面積/82.20 ㎡ ・延べ床面積/ 103.05 ㎡(住宅の部分:同じ) ・構造規模/木造 地上2階 ・最高の高さ/6.50 m ・構造仕様/木造軸組工法 ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎
【 主な仕上 】 ・屋根/コロニアル葺き ・外壁/塗装ガルバリウム鋼板角波板・一部コロニアル葺き ・内装: 床/焼き加工パインフローリング、コルクタイル ・壁/珪藻土クロス ・天井/南洋桜突板ベニヤワックス・珪藻土クロス
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/有限会社ピースファクトリー(担当:伊藤) ・木製家具/カリエラ/field

完成:2008年2月

KakinoIsu by field

 そして後日、友人の古田氏制作のオリジナルチェア「カキノイス」がダイニングになごみを添えてくれました。
敷地角の柿ノ木は、家が建つ前も、家が建った後も、同じ場所に立っています。施主さんは、干し柿づくりに今も余念がありません。