



びわ湖のほとり、光と風が巡るデザイン住宅
滋賀県、びわ湖を望むおだやかな丘陵地に、この注文住宅はあります。周辺には様々な様式の住宅が建ち並び、落ち着いた街並みが形成される中、木造2階建ての小住宅を設計しました。2006年の秋にご相談をいただいてから、土地探し、そして設計へと、約1年という時間をご一緒させていただきました。
美しい隣家との「対話」から生まれた建築
私が初めて敷地を訪れたとき、隣に建つ個性的で美しい住宅が目に留まりました。この素晴らしい建築とどう対峙し、いかに調和させるか。それが、このプロジェクトにおける最大の関心事となりました。設計者として挑戦心をかき立てられると同時に、この隣家の存在が、家づくりの明確な指針を与えてくれたとも思っています。
光を最大限に享受する「ト」の字型の間取り
敷地は南北に長く、幸い南側は畑として利用されており、開放的な光と風を取り込める恵まれた環境でした。当初は中庭のあるプランも検討しましたが、最終的には、隣家の美しい建築に敬意を払うように庭を開きつつ、プライバシーを確保できる「ト」の字型のプランを選びました。
1階にはLDKと水まわり、主寝室を、2階には2つの洋室と納戸を設け、光と風が心地よく家中を繋ぐ間取りとしています。
法規を逆手に取った、木の梁と円形天井のキッチン
この家のデザインにおける特徴のひとつが、キッチン上部の円形天井です。これは、火気使用室の内装制限という法律上の制約を逆手に取り、規定で定められた範囲のみを円形に防火処理することで生まれたデザインです。この工夫により、円の外側では構造材である木の梁を現しにすることが可能となり、垂れ壁のない開放的なキッチンが実現しました。法規を深く読み解き、機能性とデザインを両立させた、設計事務所ならではの機能美のひとつの答えです。
一軒の家が建つまでのプロセス
施主様との対話を重ね、土地の個性を読み解き、様々な制約と向き合う。その一つひとつのプロセスを経て、この場所にしかない住まいがひとつ完成しました。

また、屋根上には開放的なデッキ材バルコニーを載せています。その印象から船をイメージされ、家の名前が付けられました。
引渡後、手直し工事が少し残り、ひと月ほど住み始めたところへ後日伺った際。施主さんが工事で余ったデッキ材を使って縁側の延長をさっそく手作りされる様子や、(施主さんには申し訳ありませんが)小さな兄妹が怒られながらも階段を駆け下り庭の土で遊ぶ姿がとても印象的でした。














Photo:P_kan:庄司洋建築設計事務所(庄司)
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/滋賀県大津市 ・敷地面積/155.39 ㎡ ・用途地域/市街化区域・第1種低層住居専用地域・建蔽率50%・容積率80% ・第1種高度地域(5M+0.6/1<10M)・防火地域(なし・法22条地域) ・前面道路幅員:6.0m(北)
【 工事概要 】 ・工事種別/新築 ・建築面積/68.90 ㎡ ・延べ床面積/91.57 ㎡ ・構造規模/木造地上2階 ・最高の高さ/6.29 m ・軒の高さ/6.06 m ・構造仕様/木造軸組工法 ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎
【 主な外部仕上 】 ・屋根/塗装ガルバリウム鋼板スタンディングシーム葺き ・外壁/塗装ガルバリウムサイディング・杉板張り
【 主な内部仕上 】・床/杉フローリング ・壁/卵殻クロス、ビニールクロス ・天井/卵殻クロス・ビニールクロス
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:中濱春洋) ・施工/さくら工務店(担当:中岡誠/大工:平田擁市) ・家具/カリエラ(キッチン)
完成:2010年3月