
敷地は北側に接道し、神社さんと商店街を結ぶ参道に面しています。

リビング北向き

リビング南向き

間口2間、都市の住まいが抱える課題
大阪の活気ある街中、神社の参道に面した間口2間、奥行き8間という細長い敷地。ここで暮らす4人のご家族と愛犬1匹のために、この木造2階建て住宅を設計しました。
このような都市型の敷地では、隣家との距離が近いため、どうしても室内への採光や通風が大きな課題となります。特に、日々の洗濯物を干すスペースを確保しようとすると、道路に面したリビングの前にバルコニーを設けざるを得ず、結果として洗濯物が眺めを遮り、落ち着きのない空間になってしまいがちです。暮らしの中心であるリビングが、常に生活感に溢れてしまうのは避けたいところでした。
バルコニーではない解決策「階段室を兼ねたサンルーム
そこで、思い切ってバルコニーを設けない、という選択をしました。代わりに建物の中心に配置したのが、階段室を兼用した大きなサンルームです。
この空間は、まさに家の心臓部。頭上に設けた大きなトップライトから光が降り注ぎ、心地よい風が通り抜けることで、暗くなりがちな家の奥まで明るさと新鮮な空気を届けます。部屋を移動のたびサンルームを通り抜けることで、家の中にいながら、光や風の移ろいを通じて季節を肌で感じることができます。
季節の厳しさも、暮らしの豊かさに
もちろん、夏は暑く、冬は寒い、外気に近い厳しい空間になるかもしれません。しかし私は、その環境の変化さえも、日々の暮らしに豊かさをもたらす要素だと考えています。快適なリビングや個室へ移動する途中で、ふと季節の気配を感じる。そんな瞬間が、この住まいならではの体験となるはずです。
幸い、計画中に東隣の敷地が駐車場となり、現在は開放的な環境に恵まれています。しかし、将来もし隣地に建物が建ったとしても、このサンルームが安定して光と風を室内に届け続けてくれるでしょう。変化していく都市の環境の中でも、変わらない心地よさを実現する、持続可能な住まいを目指しました。

ダイニングとキッチン。キッチン上はロフトスペース。

玄関ホール。自転車も置ける広めのスペースです。

1階奥にある寝室。オープンクローゼットの手前にベッドのスペースとなります。


階段下のトイレ。
バスルームはハーフユニットを使用。


階段を上がった直ぐは物干しスペースを兼ねたサンルーム。天窓もあり、現状はパーキングになっている南側の隣地に将来建物が建っても、陽が入るようにしています。東西に窓を設け風通しも良好です。


サンルームの一画に洗濯機コーナーを用意しました。
南側に進めば子供室。アイランド状のクローゼット。


大工さん製作のキッチン。カウンターとフードだけ家具屋さんにお願いしました。
そして、ダイニングからリビングに向いた様子。

建物正面外観。

夜景。
Photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/大阪府大阪市 ・敷地面積/59.31 ㎡ ・用途地域/市街化区域 近隣商業区域 建蔽率80%・容積率300% ・前面道路幅員/(北)5.45m
【 工事概要 】 ・工事種別/新築 ・建築面積/42.58 ㎡ ・延べ面積/79.10 ㎡(住宅の部分:同じ) ・構造規模/木造地上2階 ・最高の高さ/7.16 m ・構造仕様/木造軸組工法 ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎+柱状改良
【 主な外部仕上 】 ・屋根/ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き ・外壁/ガルバリウム鋼板小波板ヨコ張り
【 主な内部仕上 】 ・床/スギフローリング 壁 ・壁/モイス(ケイカル板)、OSSB ・ 天井/モイス、OSSB
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/いなほ不動産(大工:岩井)
完成:2012年4月
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