
正面。北向き外観。コンクリートとガルバリウムの外部仕上。

南の庭向き外観。庭には小さな砂利を敷き詰めています。

始まりは「普通の家には見えないほうがいい」という言葉
神戸市郊外、大規模開発によって生まれた閑静な住宅地に、この住まいはあります。
若い施主様からいただいた最初のご要望は、「コンクリートを使いたい」「今しかできないこと」、そして「普通の家には見えないほうがいい」という、創造性を掻き立てる挑戦的な言葉でした。
様々な素材に触れる職業に就かれていると伺い、過剰な仕上げ(化粧)を施すのではなく、コンクリートや木材といった素材そのものが持つ力強さや表情を、ストレートに表現した建築を目指すことにしました。
ミニマルな空間構成という選択
最終案に至るまでには、いくつものアイデアを検討し、数ヶ月分のデザインを破棄したこともありました。限られたご予算の中で、コンクリートを内装のアクセントとして部分的に見せる方法もあったかもしれません。
しかし、施主様のイメージはもっと大胆で、正直な表現を求めていると確信していました。そうして辿り着いたのが、この小さな、しかし強い存在感を放つ住まいです。
RC(鉄筋コンクリート)造と木造を組み合わせた建物は、ほぼワンルームに近い潔い空間構成。浴室以外に固定の壁は設けず、各スペースは家具によって緩やかに仕切られます。これにより、将来のライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる、自由度の高い住空間が生まれました。
施主様の想いを映す、唯一無二の建築へ
この住まいは、施主様の思い切りの良さが、そのまま建物の個性として結晶化したような、唯一無二の建築と感じます。
施工中は、そのユニークな設計から現場の職人さんたちを驚かせることもありましたが、難しい納まりも一つひとつ丁寧に仕上げていただきました。現場監督をはじめ、この挑戦的なプロジェクトの実現に携わってくださった全ての方々に、心から感謝いたします。

内観全景。ワンルームの内部空間。浴室以外は家具で区切っています。

玄関スペースとキッチンスペース
キッチンの向こうはガレージに繋がる勝手口。

リビング北向き
リビングの北面には薪ストーブを設置しました。

ベッドスペース
鏡の家具側面は、洗面コーナーの背中になります。

南面庭からの様子

正面の壁面は、窓・扉と壁面が交互に連続しています。ガレージは大きな開き扉。

開いた様子。

アプローチ

正面ポーチ

正面道路側の建物全体夜景。右側ガレージの上部は納戸スペースになっています。

庭側建物全体の夜景。
Photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/兵庫県神戸市 ・敷地面積/222.54 ㎡ ・用途地域/市街化区域 第1種低層住居専用地域 建蔽率40%・容積率80% 第1種高度地区・外壁後退1.0 m 敷地面積の最低限度100m2 防火指定なし(法22条指定地域) 地区計画 宅地造成工事規制区域 ・前面道路幅員:(北)6.0 m
【 建物概要 】 ・工事種別/新築(一戸建ての住宅) ・建築面積/61.75 ㎡ ・延べ面積/70.10 ㎡(住宅の部分:同じ) ・構造規模/RC造一部木造 地上2階 ・最高の高さ:3.86 m(平均地盤面より) ・基礎仕様/鉄筋コンクリート造ベタ基礎
【 主な外部仕上 】 ・屋根/コンクリートの上塗膜防水・塗装ガルバリウム鋼板瓦棒葺き ・外壁/コンクリート打ち放し・塗装ガルバリウム鋼板波板張り
【 主な内部仕上 】 ・床/コンクリート金ゴテ押えの上防塵塗装 ・壁/ガラス繊維強化セメント板・木質ハードボード ・天井/木造梁現し・木質ハードボード
【 設計/施工 】 ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/伊万里工務店(担当:山口憲治) ・家具/カリエラ ・金物製作/LOOP
完成:2007年9月
関連ブログ
掲載等
- Observations on Japanese Architects:アルゼンチンで行われた日本の建築展に出品させて頂きました。アトランタに巡回。
- NU house, Hyogo, Japan, Building, Architect, Images | e-architect :イギリスの建築サイトに紹介していただいています。

その後、増築を行いました。「 NU+ 」