
大阪市内の賃貸住宅のリノベーション計画です。

建物正面

玄関から入ったところ
古い建物を慈しむ心から始まった、リノベーション計画
大阪市内に今なお点在する、下町情緒を色濃く残す長屋。この「高殿の長屋」も、そんな風情ある一軒でした。
この長屋を管理されていたのは、大学時代の後輩の実家が営む不動産店です。「古い民家が持つ味わいを活かし、手を加えながら大切に住み継いでほしい」。その温かい願いが、このリノベーション計画の出発点となりました。
ハーフビルドで作る。皆の手で紡ぐ温もりの空間
賃貸物件であるため、事業性を考えると大きな予算はかけられません。そこで私たちは、屋根の修繕やユニットバスの設置といった専門工事は工務店に依頼し、内装の塗装などは自らの手で行う「ハーフビルド」方式を採ることにしました。
事務所のオープンデスク(設計実務研修)に参加していた学生たちや後輩、そしてオーナーである不動産店の方々にもご協力いただき、皆で内装のペンキ塗りなどに汗を流しました。顔にペンキを付けながら、和気あいあいと作業を進めた賑やかな風景が思い出されます。
さまざまな人の想いと手が加わることで、この小さな住まいは、新築にはない温もりと、素朴で愛着のわく表情をたたえています。古いものを慈しむ心がつないだ、記憶に残る古家再生の仕事となりました。



ちょっと不思議な建具を作りました。チョウチョの様に開く「バタフライ扉」と呼ぶことにしました。
左は洗面室とバスルーム、右はトイレになっています。
脱衣スペースを兼ねる洗面室は、半畳程しかなくさすがに狭い状態です。そして出たところには掃き出し窓があり、塀はあるものの裏手の遊歩道に面しています。カーテンなどで仕切ってしまうのでは無く、扉を衝立代わりにして着替え場所に余裕を持たせたいと考えた工夫です。入居の方がうまく使ってくれるかどうか。
閉め切った時に正面から見れば、壁に貼り付いた板壁のようにも見えます。

バタフライ扉の向こうは小さな庭。その向こうは遊歩道です。

内観全体

内縁の洗濯機スペース
外部の板塀は、元々貼られていたフローリングを転用しました。

台所はそのままに。

建物裏側。遊歩道から。
Photo:P_kan
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/大阪府大阪市 ・用途地域/市街化区域
【 工事概要 】 ・工事種別/改修(一戸建ての住宅) ・建築面積/34.32 ㎡ ・延べ床面積/34.32 ㎡(住宅の部分:同じ) ・構造規模/木造 地上1階(平屋)
【 主な仕上 】 ・屋根/カラーベスト ・外壁/モルタル ・内装床/パインフローリング着色ワックス ・壁天井/EP塗装
【 設計/施工 】 ・事業主/日新商事(canvas不動産) ・設計/庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/伊藤嘉材木店 + 有志一同