
竹中大工道具館「技と心」セミナーに行きました。今回は島根大学教授・山下晃功先生による「鉋(かんな)」の話。その山下先生の自己紹介から講演がはじまるやいなや、その話し振りがおもしろくビデオやCGを使った内容に1時間あまりの講義があっと言う間に終わりました。
鉋で木の表面を平に仕上をする様子はごく当たり前のように見えますが、山下先生はなぜ?こんなにも薄く削れるのか?さらに木の目に逆らう逆目に削っても美しく仕上げるのは何故なのか?その単純な疑問からスタートし、中等教育で教える教員を指導する現場に従事する立場になられた事もあり、鉋の世界を学術的に体系化し学問的に後世に伝えようと試みた世界で唯一のカンナ博士と自称?されています。
37.5度
ヒノキを削る際に最適な宮大工の鉋の刃の角度です。90度、60度、45度といろいろな角度でヒノキを逆目に削る様子を、高速度撮影のビデオ映像で紹介されました。同じ鉋の刃先でも切れる様子が全く違いました。37.5度以外の角度では目が逆らって表面がざらつきます。なのに37.5度ではまるで違う。そして、切り屑が美しく鉋から排出される。また、一枚刃の場合、裏金のある2枚刃の場合など、ヒゲソリのコマーシャルではありませんが、その削れる様子、それに至る先人の知恵や工夫がビデオの紹介でとても良く理解できました。
後半には鉋を扱う人の動きに着目した話が続きます。骸骨が鉋を使うCG映像の説明で会場が沸きましたが、どこでどんな風に力が入っているのか、とても良く分かります。鉋を扱うにはヘソが重要だそうですが、上体の鉋と肩とヘソを結ぶ三角形が崩れない様、一定の力で引くことが肝心なようです。理解出来ても容易く出来る訳ではないと思いますが。。。
最近の建築現場では鉋を引く様子が実はあまり見られません。ほとんど工場で加工されてきた材料を組み立てるだけで済むようになっています。幾種類もの鉋を並べる大工さんを今は見ることがほとんどありません。昔は鉋台が現場の中心に据えられ仕事が進んでいた様に思いますが、今はベニヤで組んだテーブルが中心。そんな様子を見ても、技の継承は危うい様に思えてなりません。山下先生はもし、ロボットに鉋を使わせるにしてもそのデータは人間がインプットしなければ成立しない。いくら道具が発達しても、基本は人間にしか無いだと話をされていました。
スポーツの世界で人の動きが科学される様子はテレビなどを通して、日常的に知っています。今回の講義で、道具の進歩もさることながら、大工さんを始め職人の世界は人の動作が極められる事があってこその技術なのだと改めて知る事が出来ます。奥の深さにさらに感じ入りました。