着色板張り外壁18年目の塗り直し

AZUMA-FOTO|奈良の写真館18年目|庄司洋建築設計事務所
塗り直し前。西面の様子

去年のことですが、完成して18年を過ぎた写真館「AZUMA-FOTO」の外壁塗装の塗替を行いました。杉板張りの上に黒塗装を施した建物の特徴となる面です。東西南北ありますが、写真は主となる西面。

ご相談を受け赴くと、特に南面は板の反りもあり一番傷みがありました。それと比べると、北面は塗装面にまだ多少の艶も残り、やり直しが必要ないぐらいにも見えました。雨の掛からない西の軒下面も塗装の傷みはまだ少ない様子です。広い前面道路の角地にあるので、四季を通じて陽はサンサンと当り、風雨に晒される経年変化が非常に分りやすく現れています。
こうして拝見すると、南面が一番厳しい環境なのだとよく分ります。

色変更のご希望もあったのですが、当初が黒なので濃い目の色を選んだとしてもムラがでないか心配で、費用を抑えるためにも間違いのない黒の塗り直しとさせていただきました。
当初塗装はステイン系木材保護塗料の中ではシッカリ色の付くタイプを選んでいました。今回も同じものを使う手もありましたが、傷み具合で吸込みも変わり塗りむらが強くでるのでは?と考え、塗りつぶしタイプで且つ、天然素材の顔料で色褪せの少ない木材保護塗料を提案させていただきました。塗りつぶしタイプの塗料ではツヤありがほとんどですが、ツヤ消し剤を使わずにベースがマット調の塗料です。(実際には半ツヤよりもやや押えた感じぐらい)

お願いした工務店さんには痛んだ外壁を一部貼り直しなど手を入れていただき、板張り全体にも押えクギの打ち直しを出来るだけ目立たないよう丁寧にしていただけました。
塗り直しが終わると、建築当時の勇壮さに戻りひと安心です。

AZUMA-FOTO|塗替した外壁板張りの様子|庄司洋建築設計事務所
節のところは多少塗装のノリが違うので、見上げると当初塗装よりも少しだけ目立つ感じになった気がします。
AZUMA-FOTO|奈良の写真館塗替後の様子|庄司洋建築設計事務所
庇にしているポリカー屋根を貼り替えていただいています。2階の大きな窓上にも庇を取付けてもらいました。

気分だけのDIY断熱工事

 わが家は築ん十年になる住まい。よって造りは今どきの省エネ住宅からほど遠く。断熱材はあって無いようなもの。良く言えば、四季折々の寒暖感じる住まいです。冬ごと嫁さんは、家のアチコチで寒さ対策をアレコレ模索している始末。

 ケンチッカでしょ。アンタもなんか考えなさいよ。
 施主様がツノを立てる前に、気分だけのDIY断熱工事を提案してみました。

 居間にしている和室押入れ内の外壁と床の面がとっても冷たい。締め切った押入れを開けるたびヒンヤリ空気が流れてくるのが分かるほどです。そこで、その床面と外壁面に薄い断熱材をはめ込んでみることにしました。

 日曜日、ホームセンターで厚み3センチほどの板状断熱材を買って来ました。採寸して切り出した断熱材をはめてみると、ピッタンコ。我ながら良い施工。断熱材はピタピタにするのが肝要です。フトンの隙間を想像してください。

 ん、おや、これだけでもなんか違う。冷たい感じがだいぶ無くなってる。断熱材ってスゴいね~。とても設計士と思えぬ素人な感想。施主様もご満悦な様子。

 と、喜んでも断熱の抜けが多すぎる事は分かっている。部屋が暖かくなったかはななだ怪しい次第。それでも明らかに冷たい空気が流れてきていたところが止まっただけで、随分違った印象になりました。

 今回使った断熱材は、押出法ポリスチレンフォーム断熱材1種b(C)というボード状のものです。熱伝導率 0.036W/(mk) で厚みは 30mm。性能で言えば最低必要クラス。これを省エネ住宅レベルにするには、厚み90mmぐらいを家全体に貼る必要があります。
 重ねて3枚貼らないと省エネ住宅には対抗できないのか〜。なんと、ほど遠い。

 コレに慣れてしまえば今の喜びは忘れさられ、施主様の要望は厳しくなるばかり。わが家の断熱工事は、まだまだ続きそうかも。

ランマ付の掃き出し窓

 わが家の間取りはすこし昔風なところがあります。内縁(うちえん)とも言える1間の廊下を挟んで、食事も就寝もしている主室のタタミ8畳間があります。8畳間と廊下とは障子で区切られ、廊下には掃き出し窓がついています。そして、障子と掃き出し窓にはそれぞれ小窓の「欄間(ランマ)」が付いています。

 朝起きると最初の仕事は、掃き出し窓の雨戸を開けて、ランマの小窓を開けること。廊下の奥は台所とつながっているので、朝食の用意や、弁当の支度を始めて換気扇を廻し始めれば、小窓を開けないと排気がうまくいきません。小窓を閉めたまま魚を焼き始めようものなら、たちまち家中に焼き魚の匂いが立ちこめてしまいます。

 なぜそんな事になるかと言えば、今ごろの住宅では必ず付ける24時間換気などの給気のための開口がないからです。ですが、ブロロロロッと廻る換気扇の風量を思うと、直径10センチの換気穴が一つ二つで給気は足らないのでは?と正直思うところ。朝夕の食事準備の前、小窓必ず開けて新鮮な空気を入れる行動が、わが家では当たり前の日常になっています。

 掃き出し窓の向こうには、小さな庭を挟んですぐ公道です。しかしランマは目線の上にあるので、全開しても道行く人の視線は気になりません。向かいのお宅の2階からだとどことなく覗けなくもありませんが、ほとんど気にならないぐらいです。ランマのお陰で、心地よい季節なら気持ちよく窓を開けて過ごすこともできるのです。
 エアコンを掛け始める前の初夏なら、掃き出し窓と8畳間障子の両方のランマを開ければ、主室にも適度な風が入ってきます。こうした季節なりの使い方ができるのは、どことなく家と共に暮らしている感じがします。

 そんなこんなで、わが家の「ランマ付の掃き出し窓」をとても気に入っているわけですが、なぜだか、人様の住まい設計に取り入れたことがない! 昔風のすこし野暮ったいイメージが無くはありませんが、窓のカタログでは何度も目にしていたはず。なのに、これまで図面に落とし込んだことが無いことに、今更気がつきました。
 しかし、最近の窓カタログでは見た記憶が乏しい。改めて確かめてみると、昔からある窓シリーズにこそあれ、最近のシリーズ(特に断熱性を謳う窓)には記載が見当たりません。

 気になって某メーカーのHPから問合せてみると、「誠に恐縮ですが、ランマ付引違い窓はご用意が無いのが現状です。販売量が減少した為、廃番となってしまいました。」との回答。別メーカーで問い合わせても、「(××シリーズであれば)装飾引違い窓を段窓して頂く事にてランマとしてご使用頂けます。採用して頂く予定の窓サイズによって制作可否が変わってまいります。」との回答。
 んんん、ともかくほぼ標準では無いということだ。回答の通り需要がないのか。はたまたメーカーサイドの製品絞り込みなのか。それとも断熱性能が確保しづらい形状だからなのか。採用においては不用意に描けず、確認と注意が必要にならざるを得ない。

 これまで自分の設計にセレクトしなかったとは言え、定番商品な気がしていました。それが、無くなるとは思いもしなかったことです。設計上で替わりの工夫はあるでしょうが、自分が実際、便利に思っているので寂しいばかりです。
 わが家のランマ付引違い窓はいずれ遺物となるのでしょうか? 換気の事がコロナ関連のニュースで毎日取り沙汰されるこの時勢に、復活はないのか? 密かに期待するばかりです。

たくさんの型ガラスで肩こりました。

昨日は建て替え計画を進めている解体前の古家で、某テレビ番組の匠のごとく、沢山残るガラス障子にはまっている型ガラスを一枚一枚外す作業を一日中していた。今はおそらく手に入らないだろうチョッと変わった模様の型ガラス。解体されて粉々にされてしまうのは余りに忍びなく、新しい建物にいくらかでも使いたいと思い、施主さんに都合をつけてもらってせっせと寄せ集めた。古家に愛着を持つ施主さんにもきっとよい思い出になる。大きなガラス板はないが、おそらく使い切れないぐらいの枚数にはなっただろう。なかなか出会えないこうした経験を楽しませて頂いている。実は本日、背中や首筋が筋肉痛でクタクタです。

今日はたまたまネットで調べものをしている最中、以前の勤め先でお世話になった施主さんの屋敷が解体されていた事を知った。しかも半月前にもならない話だった。その建物は著名な建築家が設計した住宅で保存を惜しまれていた。なので偶然知る事ができた訳だけど、当時に何度か建物に入らせて頂いて、なかなか見る事ができない重厚な造りにキョロキョロしていた事も思い出した。ネットで見た解体の様子に少々ショックな気分。跡地はマンションが建つような記述も見つけ、さらにやり切れないものがありました。

他にはつい最近、お世話になった先生の自宅が建て替えられる話しがあった。ここもまた立派な日本建築だっただけにごく普通のメーカーさんにお願いされるので、身勝手かもしれないが残念な気がしてしまう。自宅そばの立派な白鹿の工場も今は無くなって、だだっ広い更地になってしまった。

古いものが新しいものに入れ替わるのは避け様の無い事ですが、今回ガラス板を残せるのは本当にシアワセな気がします。うまく使ってあげたいです。

リアルな木目柄シート材に圧倒された。

雨の日は賑やかに

今日の午後に雨降りの中、面材メーカーの営業さんがやってきた。えらく元気な口調に少々食傷辟易しかけてきたところ、カバンから取り出したサンプルに驚いた。カタログはまだ揃ってないのですが、新しい木目柄のシート材です。。。

取り出したファイルに挟まれているのは、まさしく本物の突き板のサンプルかと思えるような素晴らしい出来のニセモノだ。思わずスゲ〜〜ですね。コレ!?と驚嘆してしまった。あんたマジシャンでっか??これは一体なんなんや。日本人ってホンマすご〜い。一体何を求めているのだろうか。木目がリアルにプリントされているのは当たり前で、肌合いの凹凸がシンクロして再現されている。触っても本物?と思いそうになる。バーチャルとリアルの境目が本当にない精巧な3Dとしか言いようが無いのだ。

本当に高価な銘木を目の前にすると、多分本物どうか疑ってしまうに違いない。適当にひん曲がった安物の品の方が、きっと本物と思い込むに違いない。前の事務所でプリント天井板を長いコト本物だと思い込んでいたり、新しい事務所の聚落壁がクロスであることをすぐに見抜けなかったり、エエ加減な設計士だからエラそうな事は書けまい。と思うけどやっぱり書きたくなる。こんな世界で育ったコドモには、ホンモノだとかニセモノだとか、まるで意味が無くなる様な気がする。オトナの嘘や見栄に塗り替えられた間違った世界に、何も知らずのめり込む様な危機を感じる。やめようよこんなこと。

なのに悲しい設計士は、そう書きつつも節操なく使ってしまいそうになるのです。。。う〜ん。生きるべきか死ぬべきか。とってもムズカしい問題です。

ストーブとコンクリート

水門工事

自宅近く、西宮港の入り江でしばらく前からごそごそと大掛かりな工事をやっていた。対岸に大っきなクレーンやらが常駐し、気がつけば海水をせき止め何やってんだろうと気になっていたら、鉄筋が組まれていた。普段はバリケードで囲われて近くに寄れず、いまひとつ様子が分からなかったのだけど、立て看板を見つけ水門を造るのだと分りひとしきり興味津々の毎日です。夜遅く事務所の帰り、普段は真っ暗なのにこの日はブルーシートに囲われて明かりが灯っていた。人気が無かったのでこっそり近づいてみたら、現場の中程にストーブが煌煌と焚かれていた。コンクリートの打設が終わったんだと分る。

実はコンクリートも寒さに弱いのです。なので冷え過ぎない様にしてあげている。夏だと水浴びさせて、表面が極度に乾かないようにしてあげないといけない。ブルーシートをかけてあったりもします。出来てしまえば石と同じようなものの気がしてしまいますが、コンクリートは化学反応で硬化するあくまで建材なのです。簡単に書いてしまえば、コンクリートの打設も人の過ごしやすい季節にするのが一番よい。家の工事も春先からスタートして気分良く基礎工事を終えるのがベター。そう考えるとちょっと面白い気がします。

ホンモノとニセモノの境目は?

建売住宅や分譲住宅の設計の手伝いしてみて、工業化とか製品化と言った言葉と、手作りとか職人技と言った言葉が以前に増して引っ掛かるようになりました。直接依頼を受けて委託物件の設計をしていると、建物のアイテムはひとつひとつ作らないとイケナイと言った義務のような気持ちが働いて、寝る間も惜しんでホンモノを目指そうと意気込む事もあります。もちろん自分なんかより数倍、数十倍の労力をかけて設計をしている建築家は世の中に大勢いらっしゃいます。なので、恐れ多くも自慢の話ではなく、むしろ勉強も労力もまだまだ足りないことを切々と感じている今日この頃です。

ただ、いままであまり真剣に見たことが無かった既製木製建具のカタログを開いてみて、結構よく出来たデザインの物もあることが分かったし、メーカーによれば納まりのバリエーションが思った以上に揃っていることも最近驚いたことのひとつでした。既製品を使えば設計の自由度は無くなるという錯覚で、避けていただけに他なりません。もちろんオリジナリティという視点だけで考えれば、目移りするように見えてもやはり限界はあります。しかし、世の中の建設事情や住宅事情を踏まえ、トレンドを少しでも押え世の中のニーズに応えようと開発された商品だから侮る訳にはいきません。その傾向と対応の早さはメーカーにますます必要になってくるでしょうから、使う使わないは別に、こうした製品の動向も注意して見ておく必要があるように感じだしました。

木製建具は建築の要素の中でもデザインアイテムのひとつとして捉えやすいだけに、「既製品」というものにどことなく拒否反応を持っていたとも言えます。建物の外装で言えば、サイディングもそのひとつ。以前は正直安っぽい、なんだかプラスティックで出来た様なにテラテラ感が気持ち悪い。ニセモンはニセモンでしかない。みたいな偏見でいたのですが、最近の商品をよくよく探してみると、コレいいじゃんと今まで口にしなかった言葉が出てしまいます。自分が目を背けていた間に、技術はどんどん上がって知らなかっただけ。みたいな事になりかねません。製品としての性能も上がっているでしょうし、偽物を本物にしてしまおうとするメーカーの意欲は、見習うべき事も実は多いはずです。

細かい事を言い出せば、既製品無くして設計は出来ないともいえますが、取りあえず今は意匠的な話として。

話を少し戻します。既製品建具や家具の面材も本当によく出来ています。ウソっぽいのももちろんありますが、ホンモノっぽいのもあります。ポリ合板やメラミン合板と言った化粧のベニヤ板も同じで、昔のプリント合板とは比べられないぐらいに良く出来た物もあります。シートのものもあります。実際、自分の設計した家具などの中で本物の木とニセ物の化粧合板を並べているのに、自分が見分けつかなくなる事さえあります。ホントに。本物の木の部分で塗装が上手に出来すぎると、ますます見分けがつかなかったり。そうだとすると、例えば紙のような薄い単板(本物の木を薄くスライスした板)を練り付けた化粧ベニヤ板を使う意味はどこにあるのだろうか。とさえ思えそうになります。
その昔、事務所の天井板は(古い建物だし。。)本物の板と思い込んでいたのですが、大掃除のある時に近づいてみるとプリントが剥がれている箇所を発見し、自分の眼が如何に節穴であるかを知りました。

考えてみれば、薄い単板を貼った化粧ベニヤ板とて工業製品です。考えれば考える程、工業化(あるいはニセ物)と手作り(あるいは本物)の境界は曖昧です。エコロジー、自然素材、ホルムアルデヒド、地球温暖化などなど、関連する語句はますます増えてきそうです。技術にも材料にも工業製品と手作り品は入り交じっているのが多くの建築の現状だと思います。自分はどこまでの工業化を許し、どこまでの手作りを守るのか。それもまた建築を考える上で大きな要素になるのでしょうし、安易な事は言えないと実感しています。ただ勉強と経験を積むしかその対処は無く、でなければ自分のスタンスを施主さんにきっちり説明することが出来ないように思います。

写真の建物は外装とエントランスのみリフォームしたビルで、以前にデザインをさせて頂いています。茶色い外壁部分は元々はベージュっぽい塗装を施されていましたが、砂岩”風”樹脂シートを貼り直しました。下のまばらな所はスレート”風”タイルです。離れて見ると結構重厚感が出ています。黒のルーバー部分は、エアコン室外機の目隠しになっています。デザインと指示だけ渡しておいて、出来上がりを見たのは実は最近だったのです。思った以上によく出来ていました。(笑)

ループ

仕上表に材料を書き込み始めると、今までボ〜ッとしていたものが、
トタンに現実味を帯びてくる。
アイデアを練っている計画始めは、なんとなくコンナカンジ、アンナカンジ
と好き勝手に考えていたコトが、イザ実際のものに置き換えようとすると、
コレモチガウ、アレモチガウ、ドウモチガウ、と悩みだす。
それでも一応は決めていた材料をネットで改めて検索してみると、
「廃番」なんて書いてあったりするものだから、具合が悪い。
イメージがグラグラと崩れ落ちる。
建築家好みの材料は、どうも一般の方にはお好みでないのだと思えるフシがある。
いや、メーカーや施工者にとってお好みでないのだと言った方がイイのかもしれない。
挙げ句の果て、考えていた事さえもユラユラと危うくなって来る。
気を取り直して、検索を再開するとトホ〜も無く延々と時間だけが過ぎて行く。
現実の厳しさにグッタリ。
世の中は検索で便利になったけど、無限の情報に振り回されそうだ。
もっとシンプルになれないものだろうか。
と頭を切り替え直して、また仕上表に向かうのですが、
これがまたなかなかうまくは行かず、フリダシに戻ってループを描き始めます。