断熱気密で大事なこと

外壁材が貼られてきましたが、それは次回以降でご紹介。

計画場所は関西でも山間になり、【 住宅の省エネルギー基準 】の地域区分で見れば5地域に当ります。関西では大阪湾・瀬戸内に面する平野部は概ね6地域となり、それに比べると冬は寒い場所と思って差し支えありません。なので、普段よりも断熱はシッカリ目。

今は温暖化・低炭素などのキーワードから時勢だけでなく、建築法規上でも省エネ・断熱への比重が大きくなっています。建築現場に出始めた30年前からすれば、考えられないほど断熱材を沢山使うようになりました。その頃は正直に無頓着でしたが、今は断熱にまつわる気密・結露と言った情報が嫌と言うほど世間を飛び交っています。
振り回されているのは、建築主さえだけでなく設計者もです。残念ながらしばらくは、ひたすら断熱に立ち向かう日々となりそう。

それはそれとして、今回の建物は法令上の基準値を充分に超え、【 HERT20 】提唱基準のG2グレードにやや届かず概ね適合、と言った断熱性能になりました。現時点ひとつの目安とすれば、設計上は結構いい線。と思っています。

気密断熱で大事なこと、工務店さん大工さんが断熱気密を理解・意識して、この後どこまで丁寧に工事していただけるかです。設計上の数値がいくら良くても工事が雑になれば、実際が目標数値に決して届きません。

あえて言えば、設計上の断熱性能が特別に高くなくても、丁寧な断熱気密工事が出来れば、設計以上の断熱効果に結びつくのだろうと正直思うようにもなりました。現場に来られた大工さん達は、他の工事現場でハウスメーカーを含めた高気密高断熱住宅にも携われた様子でした。イロイロな現場の話を伺うと、そこからメーカーや設計者が試行錯誤している様も感じられます。

*【 住宅の省エネルギー基準 】一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター
*【 HERT20 】一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会

外壁は間柱間に高性能グラスウール120ミリを充填しています。外側には前の記事で紹介のフェノールフォーム30ミリが付加断熱材としてプラスアルファされた2層断熱となっています。
上に見える屋根下の梁間が断熱材で埋まります。
天井と斜め壁のところは、吹込みのグラスウールです。天井は300ミリ、斜め壁は210ミリの吹込みを行っています。
緑のビニールシートは防湿気密シート。気密は構造パネルのところで基本は終えていますので、防湿が主な目的になります。結果的には2重気密と言った具合に近いかもしれませんが。。。
断熱材を入れる前。欠損埋めの様子です。
サッシ廻りも隙間無く。
基礎廻りは防蟻タイプのポリスチレンフォーム60ミリ、隙間隙間も奇麗に閉じて頂いています。
気密検査の装置。開口のひとつを使いラッパから室内空気を外に送り室内を負圧にします。そうすると、サッシの隙間などからスキ間風を感じます。

気密工事が終ったところで、施主様立会の気密検査を行いました。通常 1.0 以下であれば合格ライン。
結果はC値 0.2 。1平方mあたり 0.2 平方cm の隙間と言う数値です。今回の家全体に換算すると おおよそ 19平方cm 相当になるそうです。
検査係の方から、ほぼ引違いサッシの隙間ぐらいでしょう。年に数件の気密の良い家ですよ。と言われ、驚きと安心のひと幕となりました。丁寧な工事のお陰です。

なにより静かですね〜、防音室みたい。と施主様は驚かれていました。

外壁の下地工事

外壁下地の終った全景
近畿縦断の台風7号が通り過ぎました。現場は無事でひと安心。
大きめの窓にガラスや障子がまだ入っていなかったので、中からベニヤで押え、外にはブルーシートがしっかり掛けられていました。

外壁の下地とひとくちに言ってもイロイロなものがあり、実は、家の寿命や基本性能を左右するところがイロイロあります。
外壁にしても屋根にしても、まずは雨風から暮らしを守る必要があります。断熱性能やらとかく言われる昨今ですが、なにより家が長持ちしてほしい。単純な話です。
仕上材はピンキリありますが、高価な仕上をしても下地の材料や施工が悪ければ家は長持ちしません。

前回記事と同じ事を書いてしまいます。見えないところにお金を掛けるのは、良い事といくら分かっていても実践するのはなかなか難しいものです。
毎回設計をさせて頂く度、そんなことをアレコレ悩みはじめると、本を開いてネットをうろついて一向に仕事が進みません。

構造パネルと断熱材用の桟木
時間を遡って外壁耐力壁の様子です。
外壁の構造面はMDFと言う木質パネルです。川べりなのでシロアリを心配する工務店さんの話を受け、予め防蟻処理れているシロアリ対策タイプを全面に採用しています。また、このパネルは一般的な構造合板等に比べると透湿性能が高く、内部結露の抑制に働きます。
白いテープはパネル同士の継ぎ目を塞いで気密性を高める工法のひとつ。桟木に隠れていますが、タテ方向にも同じようにテープが貼られています。
外張り付加断熱材
タテ桟木の間にはめ込まれているのは、フェノール系の断熱ボード。
外壁の断熱方法は軸組間グラスウール充填+外張り付加断熱となっています。
断熱材の上から、透湿防水シートが貼られた様子です。
住宅寿命の長いドイツ製。ふだん見慣れたシートより厚みも感じシッカリした印象です。黒いシートが昔のアスファルト防水紙のように見えますが、全く別物。
シート上に井桁に組まれた桟木は外壁仕上材の下地になります。

廻りが緑に囲まれているので、海外で仕事をしているような錯覚がしてきます。意味もなくテンションが上がってきます。海外製品を使うのは違った意味で悪くないですね。
窓廻り。防水シートメーカーの商品を使っています。
なにかとよく考えられている気がします。テープ類もメッチャ伸びてシッカリ着いて、施工された工務店さんも安心感が髙いと話をされていました。
余談ですが、同メーカーのウレタンフォームを使っている様子です。
断熱や気密の補完、隙間埋めとして使用されます。吹き出し量の調整ができる専用ガンを使っているので、今まで現場で見ていたスプレー缶のウレタンフォームよりも無駄も少なく、使い勝手が良さそうに見えました。
アイスクリームではありません。上棟時の写真。
軸組金物の外部側露出部分に熱橋対策として施されたウレタンフォームです。固まったら真っ直ぐ切り落とします。今回は外張り断熱材が囲いますが、無い場合は特に、こうした箇所に気を使っておくのが断熱性能上に大事なところです。

高価な製品や材料を使う事が必ずしも良い訳ではありませんが、適材適所に良く考えられた製品を吟味して使うと、現場も良い仕事に繋がって行くような気がします。
意識せず何気なく使っていたものを振り返ることは、時間が掛かりますが大事です。